[戻る]
一括表示

第56回パールレース参戦記 投稿者:Bella Notte藤永 投稿日:2015/08/17(Mon) 01:24:01 No.341

もう一月くらい前の話になりますが。


第56回パールレース参戦記
2015.7.23~28

7月末、1週間にわたる休暇を頂き、15年のセーリング人生の中で初の外洋ヨットレース。
三重県五ヶ所湾口から、伊豆諸島利島を回航し神奈川県江ノ島までの180nmを帆走るパールレースに徳島ヨットクラブ所属のContinueII<X-35OD>のメインセールトリマーとして参戦。


7月23日
電車でシャトルバスの出る宇治山田まで向かう、駅に着くや否や明らかにこいつはセーラーだと云う風貌の人間がちらほら。
こんな山奥の駅に明らかミスマッチな光景である。
雨の滴る中、セールセット、ジャックラインの装備。
普段のレースではあまり使うことはないが今回に限っては使用するシチュエーションは十分にあり得る為、ワンポイントリーフコードをセットする。
この日は翌日に向けた準備と前夜祭、180nmの長旅の為英気を養う。

24日朝
確定出艇準備に余念がない。
GPVの予報では20kts以上の風が予想されている。
台風12号によるうねりも結局残っているのでワンポイントリーフも念頭に入れ、テストの為率先して出航。
リーフシステムは問題無し。参加艇も続々と集まり、11:00分リコール艇が2艇いるものの滞りなくスタート
8.6nm先の布施田水道沖の岩礁を目指す。
スタートがバッチリ決まり、風下にCamarades<Salona-44>、τ Draconis<Xp-44>、Joker<X-41OD>、
風上に1122Trekkee<Muir-40Cu.>、ESPRiT<Carkeek-40Mk.II GP> 、Mystic-X<Farr-40mod>、Turtle-6<Farr ILC-40>
後方にNadja<First-40.7>、ContessaIIIX<First-40>
見事に40ft艇団相手に健闘するも風が落ちた瞬間に風上の軽排水量艇がスルスルと前に出て行く。
此方が風を掴んだ時には風上の軽量組は遥か彼方に。
風下の無風帯に捕まっていたKLC Bengal7<Humphreys-54>にも風が入り早くも視認不可となる。
しかしこの辺の艇達はクラスが違うので、まぁ仕方ないで済ませる。
180nmの長いコース、10nmも進んでいないのにあるとわかっている定置網を目前にてんやわんやで、だったら初めから北コース行けばよかったね〜と。
その後は7〜8ktsのスピンランで順調に東進。
24日15時の時点で翌日の昼過ぎにフィニッシュできるだろうとの予想。


日没〜
この頃には15kts程の風が続いて吹いており安定したスピンラン。
日付が変わる頃に風がピークとの予想は的中、 深夜0時頃に定速12.5ktsを記録するもスピンの限界であると判断、ブローチングをくらい横倒しになり早めにスピンを下ろす。
このタイミングがよく、のちに風速表示「23」を記録。
風速表示が14~18で行ったり来たり。
艇の中で一つの疑問が生じる・・・
絶対14って事ないやろ。
もっと吹いてるって、計器を信じない症候群が出はじめる。
しかしそれもご最も。
明らかにウサギどころかヒツジが跳ねている現状で、時よりうねりの波頭が砕けてる。
結果として、風速表示が「kts」ではなく「m/s」表示であった事に、帰りの回航27日に下田港を出た時に気づく。
ってことはあの「23」って23m/s?
それなら納得いくが、真夜中の40ktsオーバーで0.6ozのスピンを揚げているのは正気の沙汰じゃなかった。
他にも、本船航路で闇の中から迫り来る貨物船を避け、ワイルドジャイブでまたも横倒しかつメインシートに吹っ飛ばされ、それが2回。
1時過ぎに、メイントリムを交代してもらい仮眠を取る、その間に遠くに見えていた航海灯とかなり距離を詰めていた。


夜明け〜利島回航
夜が明け視界を確保すると、周辺で確認できた艇は後方を北上していたContessaIIIX、目の前にいるNadja
結局このNadjaとはフィニッシュまで共にする。
日の出後1時間でウエイポイントである利島を回航
島影のダウンバーストで300Yほど先行しているNadjaが思いっきり吹き倒されてる。
性格の悪い我がチーム、それをみて「あ〜あ」とか言いながらセールをリリースしその場は無難に切り抜ける、その後はずっと先行艇を追いかけ、伊豆大島の北西で先行に成功、抜きつ抜かれつ、西から入ってくるであろう風を掴むため相模湾西よりを搬送していたのが運の尽き、1時間ほど微風帯に捕まり四苦八苦。
西側に伸ばした艇団の中では最も早く風を掴み、ロスは最小限にできたと思ってはいたけど、東側はそこそこの風が吹いていたようで、その隙に4、5艇に先行されてしまい、そのまま17着で江ノ島のフィニッシュラインを切る。

結果、
7月25日13時42分49秒(所要時間26時間42分49秒)にフィニッシュを切る
参加艇40艇
出走29艇
IRC総合:10位
Division-B全13艇
出走5艇
Division-B:4位

御前崎沖ー石廊崎沖と相模湾内で1時間以上の明らかなタイムがあったのも事実。
そこを詰めれば入賞できていたのは、たらればの話。
相模湾の1時間微風地獄はまだいいほどで、遥か先行艇は3時間の無風地獄があったようで・・・
完全無風よりマシではある。
風を取りに伊豆半島側へ1nmほどプロパーコースを離れており、かなり西側からのアプローチとなってしまった。
こちら側からアプローチすると嫌な位置に定置網がある。
夜中の予想フィニッシュ時刻は最早で11時台でのフィニッシュが予想されていたけど、伊豆大島の西で風域を抜けてしまったようだ。
ただ、実際はスタート後に予想していたフィニッシュ時刻とほぼ一致。
2度目のスピンアップでフォアガイにトラブルが発生するもそれ以外に艇・艤装に大きな損傷は無く、無事フィニッシュを切ることができました。
夜中に、スピンポールを折った艇、バーストしたスピンがタフラフに巻きついてしまいヘッドセールが使用不能になった艇等少なからず強風による損傷被害を受けた艇がいたようです。





14時
藤沢市江ノ島の地に10年ぶりに立つ。
前回はOP級の全日本選手権で来て以来で、クラブハウスが新しくなり、周辺に商業施設が出来ていた。
その日は、現地で風呂と食事。

パールレースは回航もお楽しみの一つ
26日2時過ぎ江ノ島ヨットハーバーを出港
江ノ島ー下田間は殆ど寝てました。
相模湾の夜光虫はヤバかった。
26日8時
下田港に到着。
ナビゲーションツールと気象予報ツールとにらめっこ。
進路からの風が20〜30kts予想で波も悪そう。
安全の為12時間出港を遅らせ下田観光を楽しむ。
先客として舫いを取っていたKLC Bengal7が19時頃出港していく。
早めに夕食を取り、就寝…したかったけど、0時頃まで蚊と格闘。

27日5時30分下田港を出港
那智勝浦まで27時間の航海。
沖は海況が悪そうなので、ロスはあるが御前崎に近づくコースを取る。
浜名湖の南で風波ともに落ち着いてきたので直接勝浦に向け進む。
電子チャート片手に夜間航行。

月が落ち、明かりがなくなった頃に本線航路に差し掛かる。
クサイ航海灯がいくつも確認でき気が抜けない。
1隻おかしな動きの船がいて、此方に向かっているのか同一進路なのか。
客船ぽい船で、航海灯以外の灯火があってちんぷんかんぷん。しかし青色灯は見えるので進路維持するも、明らかにミートが解消しない。
仕方なく左転進、船の形が分かる位置から見ると、アンカリングはしていないが止まっている様子。
大王埼沖の本線航路を抜け、本船の接近が無くなり風波も落ち着いたところで一度ワッチオフ。


熊野灘で来光を拝み、新宮沖で2頭のイルカに遭遇
28日8時に那智勝浦港に舫を取り、浦島温泉と鮪と鯨!
この為に回航してきたとの名言。

仕事の都合上、勝浦でお先ドロンする事になりました。
翌日からの社会復帰は大変でした。

新たな経験と航法が一気に蓄積された往復航行距離約400nmでした。

レース・回航中写真
https://picasaweb.google.com/102542419101027640725/RkpFqB
スタート前/フィニッシュ写真、成績表はHPより
http://pearl.toscrace.jp


パールレース最終成績上位入賞艇
IRC総合
1位_GEFION_BALTIC 35_0.957_20着
2位_FONTAINE_J/109_1.024_15着
3位_1122TREKKEE_MUIR 40Cu._1.136_3着

IRC Division-A
1位_1122TREKKEE_MUIR 40Cu._1.136_3着
2位_LAETITIA DEUX_FIRST 40.7MOD_1.066_10着
3位_NOFUZO_X-41OD_1.117_4着

IRC Division-B
1位_FONTAINE_J/109_1.024_1着
2位_HORNET_SEAM 31_1.013_4着
3位_NARUMI_YAMAHA 33S_1.034_2着

IRC Division-C
1位_GEFION_BALTIC 35_0.957_1着
2位_MISTRAL4_YAMAHA 31S_0.957_2着
3位_GOBLIN_X-302_0.934_4着

Re: 第56回パールレース参戦記 投稿者:だんりゅう辻本 投稿日:2015/08/17(Mon) 12:44:09 No.342

楽しく読まして頂きました。いい経験しましたね、26時間あまり緊張の連続で、夜中スピンランで横倒し想像しただけで怖いです、無事でなりより
体力がなかったら無理そして勝浦まで全行程400nmお疲れさまでした。またお会いしたときいろいろお聞かせ下さい

Re^2: 第56回パールレース参戦記 投稿者:BellaNotte 藤永 投稿日:2015/08/18(Tue) 00:38:40 No.344

だんりゅう 辻本さん

夜中の40ktsオーバーは内心さすがにヤバいんじゃないかと思っておりましたが、薄いスピネーカーを揚げている以外は、艤装艇体共に不安箇所は無く制御不能に陥る事はありませんでした。3mをら超える波とうねりの中でも安心して乗っていられる、X-Yachtさまさまです。
15年間の航海距離の2/3程の距離を5日間で帆走り抜け、セーリングに対するモノサシがまた大きくなりました。
元ディンギー乗りはインショアレースがメインになりがちですが、徳島対抗レースに何度か参加し、ディスタンスコースのレース経験は積んではいましたが、電子チャートを用いたナビゲーションなど、普段電子機器を嫌って殆どは有りませんでしたが、外洋を帆走する上で必要なスキルであると痛感しました。

- WebForum -