酒田の阿部さんは自他共に認める、貝取りの達人である。
「いいですか、サザエは貝柱があるので、蓋の裏をスプーンの細いところを使って、スッと外すと中身が簡単に取れますよ。練習して下さい。」「そんな、練習するほど採れますか?」
「大丈夫、8時半以降になると、岸壁に上がってきます。バケツ1杯ぐらいはすぐですよ」
10月5日、私達は、サザエの島?粟島に向かった。
低気圧の通過後、日本海は強い西風が吹くという。
船体を叩くような波を受け、やれやれ粟島への入港となり、フェリー乗り場の横の岸壁に舫いとったらホッとした。粟島は、周囲23キロ余りの小さい島。
観光パンフレットには『なんにもないを、楽しむ島』と書かれている。
透き通る海と手付かずの自然の残る素晴らしい島である。
港のすぐ近くに、お湯に浸りながら日本海の海が一望できる、素敵な温泉もある。
いよいよ夜の8時半、懐中電灯で近くの岸壁をそっと照らしてみた。
「うわぁー、こりゃすごいぞ。」
なんと、いるいる。たくさんのサザエが、岸壁に張り付いている。
月明かりに照らされ、岸壁にもそもそと這い上がってきているのだ。
興奮しながら大きいものばかりを選んで網ですくうと、本当にバケツ一杯はすぐ取れた。
さっそく船に戻り、スプーンで貝柱をはずし、中身を取り出して刺身で食べる。
磯の香りが口いっぱいに広がり、甘い身とコリコリした食感にうれしくなる。
「おいしいねぇ。」 「うん。買うと高いよね。」
たわいもない会話を交わしながら、美味しい時を堪能する。
粟島に停泊中の
ハーモニー |
サザエの島粟島で |
サザエを手に高田さん |
翌日から、再び大きな低気圧の通過により、港内にも波浪が侵入し、岸壁から船を離したので、下船できない日が続いた。
「おーい。舫いとるの手伝おうか?」
「あんたら、今日は出ちゃダメだよ。明日もダメ。家の鍵閉めてきたかー?」
「食糧あるかー?」地元の方が、心配して岸壁から声をかけて下さる。
「はーい。大丈夫です。ありがとう。」
小さな島の港で木の葉のようにもてあそばれる見慣れぬヨットを見て、地元の方たちは心配して下さっていたようだ。
キャビンで
愛ちゃん |
船のホワイトボード
の活用法 |
港内が穏やかになり、島内を観光した後、まだ、うねりの残る海へ向けて私達は出港した。
次は佐渡島へ向かう。
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