船の暮らしも4ヶ月となり、かなり慣れてきたと思う。
それぞれの、役割分担もなんとなく決まってきた。
出入港時の舫いロープの準備とフェンダーの取り付け取り外しは娘の役割である。
この時、かがんで作業をするので落水しないように体を支えるのが私の役目。
ロープワークも少しずつ覚えているようである。
私は、相変わらず船に酔う。
以前ほど、ひどくはないけれど、函館のような静かな停泊地でしばらく居ると、出港したとたん気分が悪くなってくる。
だから、バナナや菓子パン、おにぎりとお湯は事前に準備し、誰でも火を使わず、勝手に食べられるようにしておくと、心置きなく船酔いできる。
突然、「今日出るぞ」というのは絶対ダメ。

9月14日、日の出とともに函館を出港し、津軽海峡を再び渡った。
函館からは逆潮になる。
なるべく本流を避け、岸よりを走り、青森との最短距離をサッと渡るのがコツらしい。
津軽海峡は毎日違う顔を見せるらしく、地元の方の話す海峡横断術も様々であった。
中でも面白いのは、「大間崎と弁天島との間を通る」という方法。
「岸は浅くてすぐ近くだからスリルありますよ。でも2メートルなら絶対大丈夫です」と
言うが、私達は怖くて通れなかった。

その後、小泊港で一泊し、深浦港に入った。
港の内外に杭の立つ岩礁がいくつもある。
昔、北前船はこの杭にロープをかけて港の外に船を進ませたと言う。
「わっ!あぶないなあ・・夜だったら間違いなくぶつかるよ」と言いながらも、
和船の栄えた時代のなごりをいつまでも残して欲しいとも思う。
深浦港では「実商」という船具店を営む成田さんご家族と知り合った。
こちらの事務所から入港するヨットは全て見える
「深浦は地元の私が言うのもなんですが、とてもいいところが沢山あります。」
とおっしゃる。ここは、私が小さい頃遊んだ和歌浦の港にとてもよく似ていた。
港から歩いていける距離に「トヨの水」があり、名水100選にも数えられている湧き水を自由に飲める。おいしい水ときれいな公園、気さくな人々と良いこと尽くめであった。

深浦港
成田さんと臨くん

深浦港の夕日
航海中出会った船に子連れで航海している船はなく、私達の娘はいつも大人の仲で暮らすことになる。だから、港で知り合う子供とはできるだけ遊ばせたいと思う。
成田さんの息子さんで臨くんとも数日だが一緒に遊び食事をし、楽しいひと時を過ごさせて頂いた。気の合う方と知り合えたときは、もっとその方たちと親しくなりたいと
思う。
時間の許す限り、この地にとどまりたいと思うけれど、季節はそれを許してくれない。
安くておいしい早生リンゴを1箱仕入れ、次の目的地、戸賀へと向かった。



函館から深浦港へ
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