佐渡島の赤泊港に入港し舫った岸壁は、港湾の管轄だったらしい。
漁協でおしえられた役場を探し、その事務所で中の人に声を掛けた。
「あのう、ヨットを数日泊めさせて下さい。」
「うん。多分あそこならいいですよ。そんであんたらどこから来たの?」
「和歌山です。3人で犬も一緒ですよ。」
「へーっ・・ようこそ佐渡島に来ましたね。」
気さくな役場のおじさんはやさしく私達を迎えてくれた。
うれしくなり、娘と手をつないで船に戻る頃にはもう空は茜色に染まりはじめていた。
佐渡島は私の思っていたより大きな島だった。
翌朝、自転車で昨日の親切な役場のおじさんが、ヨーグルトや奥様の手作りだろう、「煮しめ」を差し入れてくださった。昼から、佐渡小木港に移動し、再び舫う。
ここは「たらい舟」が有名なのだ。丸い大きな木造のたらいに女性が立って櫓をこぐ。
漁港の隅の船溜りで8艘のたらい船が観光客をそれぞれ2人ずつ乗せ、忙しく回遊していた。「のりたいなぁ」と娘は言う。
子供1回300円。記念に乗ろうか・・・とも思うけれど、テンダーに乗るのと変わらないじゃないか。と、もったいない気もする。結局、そのお金で、風呂上りに、コーラを飲もうということに決めた。
仕事をしていた時に、観光でここを訪れたなら、何のためらいもなく3人で乗っただろうなと思い苦笑する。
港から、徒歩で上り坂を20分行くと、高台に岩風呂とたらい風呂の露天のある温泉がある。食糧の買出しもかねて、その評判のいい温泉に向かうことにした。
「ハーモニー」の係留している港とは別に、小島を挟んだ隣にある小木漁港は入江の深い、静かな港である。ただ、岩礁がゴロゴロしており、ヨットで入港するのはかなり緊張するだろうけれど、喫水の浅い船ならばきっと居心地の良い港であろう。
温泉から港の夕暮れを見ながら、昔、佐渡に流された人もこの夕暮れに故郷を感じたのかと思い巡らせ、ぼんやりと温泉に浸りながら歌を歌っていると、「お母さん、家に帰りたくなったんとちがう?」と娘に言われてしまった。
残念なことに天気図では、新たな台風22号が発生していた。
粟島での経験から、島で台風非難だけは避けたい。
今の場所では台風を避けられたとしても、吹き返しの風は避けられそうもない。
佐渡島をたった2日で去るのは心残りだけれど、「台風の影響を受ける前に、能登の七尾まで逃げよう」と、夫は言う。残念だが仕方がない。
温泉で1個40円の大きな柿をたくさん買い込み、翌日、能登半島の七尾目指して出港した。
粟島から佐渡島へ
航海中はデッキで
おしゃべり |
粟島から佐渡島へ
シイラが釣れたよ |
シイラ? ふ〜ん |
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