10月に入り・・・・、

北風が冷たい空気を運んでくるようになった。
蒸し暑かった熱帯夜は過ぎ去り、今は娘と扇風機を取り合うこともなくなった。
北風の音を船内で聞き、「そろそろだねぇ・・」とうなずきあう。

洗濯機や、際限なく流れる水道水。暖かいシャワーも浴び、ゴミは毎日捨てられる。必要なものはすぐに手に入る生活を続けていると、すっかり潮気が抜けてしまった。
不便に慣れるのは時間が必要だけれど、便利さには簡単になれてしまう。
これからまた節約節水の航海となるけれど、今はその生活に早く戻りたいとさえ感じている。なぜだろうか・・・

今回の沖縄滞在中、私達は3つの買い物をした。
1、冷蔵庫のユニットが壊れ、新しいものに交換した。
2、24時間冷蔵庫を動かすため、バッテリーとソーラーパネルを2枚追加した。 
  これで海水を真水に換える造水器をバッテリーで動かすことも可能になる。
3、水を浄化するフィルターを強化した。

 ソーラーパネルを追加しました。       高性能な浄水フィルターを付けました。
船のタンクに貯めた水は、FRPの匂いもあり、今までのフィルターではとても飲めたものではなかったが、交換後、カルキ臭も消え、ご飯もコーヒーもとても美味しくなった。

『これがあれば、あの時大変な思いをしなくてすんだのに・・』と思い起こせば苦しい言い訳の出てくるものばかりである。生活が少しずつ改善され、暮らしやすくなる反面、メンテナンスも増える。なくても暮らせるが、あれば精神的負担が少なくなる。
不便を楽しむヨット生活なのに、便利を求めるのは人間の本能だろうか・・理由はともあれ、これも楽しみ方だと思っている。私は食糧を捨てずに使い切れるのがとても嬉しい。

先日、娘の通う大謝名小学校のPTAから夫は、「船での生活のことを何か話してください。」
と依頼を受けた。小学6年生の児童とその父兄を対象としている講演らしい。
夫は普段口数の多い方でもなく、決して話し上手でもない。
断るだろうと思っていたら、彼はあっさり承諾していた。
「なんでも経験経験・・・」と言いながら、連日パソコンに向かう。しかも娘も10分程、皆さんの前で話をするという。「これは大変な事になってしまった・・」としゃべらない私がソワソワしていた。
       大謝名小学校で親子講演             友達とヨットで宿題
そして講演は終わった。

「船の水も食糧も限りあるものだから何でも大切にするんだよ。あるものを工夫する楽しみも生れるんだよ。」と創意工夫について熱く話していた。
「今まで一番印象に残った所はどこですか?」と司会の方に聞かれ、娘は、「係留料も安くて、電気水道が使い放題のハウステンボスが一番よかった・・」と答えていた。
皆さんの笑いを誘う親子珍道中の講演だった。

でも中には、目を輝かせ、写真に見入る子供の姿もあり、
「この中の一人でも、こんな旅をしてみたい。と感じてくれればいいな」と思う。

そんな沖縄もそろそろ時間である。
「行ってダメなら帰ってきてもいいんだよ。その時はおかえり・・って言うからさ」と『フォクシーレディ』の仲間さんは顔を見るたびに言う。
灰汁の強い言葉の裏にある優しさを、感じ取れるだけ月日も過ぎたのだと思う。
偶然の出会いが、一生忘れない出会いになるヨットの旅。

11月には宮古島に向けて出港します.