屋久島から口之島へ

「黒潮本流は、各島の西側に突き当たり、南北に分かれ、島々の南、北両端で急潮を起こし、さらに島々の南東側付近で分流が会合して、南端付近に激潮を起こす。
もし、風向きが流向と反対ならば、波が一層高まって、小船の航行は危険となる。
この現象を『しおまくら』と呼ぶ。」港湾案内より「しお、まくら・・・」と口に出してみた。

4月28日、屋久島の一湊港を出港した。今日は口之島へ向かう。

 屋久島を出港・・
「途中、平瀬があるから流されても修正できるように西よりに走ろう」と夫は呟いた。
島影を抜けると、とたんに海がザワザワと騒ぎ出し、島影に入ると静まる。
風速4〜5メートル、機帆走だが、流れの速いところではかなり横流れしている。あらかじめGPSで設定した方位は途中で位置を確認しない と、知らぬ間に東へと流されている。

一湊港を私達より1時間以上早く出た鹿児島のヨットが、平瀬の近くに流されたらしく、口之島近くで西にコースを修正し、馬力を上げて走ってきた。
「ここら辺は、いつもこんな変な波が立つんだよ。流れも速いしね。」「いつもですか?」「いつもだよ。だから、天気の悪い時に無理すると流されて大変なんだよ・・」と仲間さんは言った。

トカラ列島は、港もきれいに整備され、自然の残る島がいくつもあり、全島に寄港したいほど魅力のある所だけれど、慣れた船でも走りにくい海域には違いないらしい。
今回は風も弱くて穏やかな日である。『しおまくら』も冷静に観察できるが、これが荒れた海だと恐ろしい。そういえば、台風2号の北上で遭難したヨットもこの辺だったと思い出した。

口之島

口之島から港を見る
口之島の、西の浜漁港は広くて整備された港である。夕方、歩いて15分の銭湯に出かけた。村の人が管理しているという小さな銭湯は、海水より濃いのではないかと思うくらいの塩泉だった。
「利用者が少ないからお風呂も廃止になりそうなのよ。あんた達もノートに名前を書いて協力してね。」と、風呂で会ったおばさんは言った。
どうやら、トカラの島々でもここは観光客の少ない島らしい。

この日も、森下さんの手作り夕食をご馳走になってしまった。毎夜、ビールと焼酎、ワインに酔う。
明日は宝島に向かうことで合意する。
 
海図が乏しいのでシーマップをGPSと連動させています。