口之島から宝島へ

水深計のない時代、南の島に入港する時は、港付近の山の高さを水深の目安にしたのだという。海から見て平らな島は、港への航路も浅く、逆に高い山々からなる島は深いと言えるのだろうか。澄み切った南の海。
入港前に知っていれば、「キャー・・浅いよ。底が見えてるからぶつかるよ。」
と、バウでバタバタと慌てふためく醜態をさらさなくても済んだのに・・

4月29日朝6時半、口之島を出港し、宝島へ向かった。
空を見ると、鉛色の雲が走っている。
「今日は少し吹きそうだな。」と呟く夫を横目に、私はせっせとフェンダーを片付け、舫いロープを束ねる。そうしないと「今日、出港やめようよ。」と言いたくなるのである。
島影を出ると、10〜15m./sの風が吹き始め、波がデッキを洗う。
久しぶりにアビームの風で、船はよく走る。
「大丈夫?どこかに入る?ウチはどこでもいいんだよ。」と無線から森下さんの声。
「アビームでよく走るからこのまま宝島に行きます。」と答えた。
私は船酔い気味だったけれど、碧海に嘔吐するたび少しずつ気分は良くなってきた。体は苦しいが気持ちは苦しくないのである。南の海の魔力だろうか。

予定より早く宝島に入港できた。その夜はみんなと一緒に島の民宿で夕食を食べた。鰹の刺身と海老と野菜の天ぷら、ご飯と魚で出しをとった美味しい味噌汁。

宝島の港

赤い色の魚を頂いた

仲間さんと宝島の子供
この島は、ダイビングサービスもあり民宿も多く、『宝島』という名も大いに効果を上げているようだ。
岸壁から海をのぞくと、珊瑚の隙間にミノカサゴや黄色と黒の縞模様や玉虫色のうろこで飾った熱帯魚が見える。

散歩の途中で砂浜に埋もれた鯨の墓を見つけた。
打ち上げられ、死んだ鯨はこの暑さの中で大変な腐敗臭を放つため、島の人が埋めたのだろう。人の骨盤と大腿骨そっくりの大きな大きな骨の墓だ。

宝島

鯨の墓を見つけました

ハリセンボンがたくさん
その後3日間、前線の通過で宝島に足止めとなり、ゲストの都合で先を急ぐ『フォクシーレディ』はここから沖縄の宜野湾までノンストップで走るという。
私達は奄美大島に向かうためランデブーは、ここで終わりとなる。
結局、鹿児島を出る時、「自分のペースで走ろうね。」と言った仲間さんが私達のペースに最後まで合わせて下さったようだ。海の男の寡黙な優しさを感じた6日間のランデブー。

5月2日、朝6時半、宝島を出港し奄美大島に向かった。
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