谷山港から屋久島へ

鹿児島県の谷山港を昼頃に出港し、錦江湾の出口に位置する山川港に一泊した私達は、翌4月27日、屋久島に向かった。
「相手に合わすと大変だから、自分たちのペースで動こうよ。
船の速度も違うし、出たい時に出て、入れる所に入ればいい。無理はしなくていいからね。沖縄で会えるからさ。」
谷山港を出る時、仲間さんは私達にそういった。

一路大隅海峡を南下する。
硫黄島の硫黄岳の噴煙が海上からもよく見える。竹島が平らなだけにとてもよく目立つ。それを過ぎると、前方に高い宮之浦岳、永田岳からなる世界遺産の屋久島が見えてきた。
矢筈埼の西にある一湊港は、銭湯もなく、スーパーやレストランのある宮之浦まではバスでも30分以上かかるので、屋久島を訪れる船は、便利のよい宮之浦港に寄港するようである。
今回、『フォクシーレディ』は屋久島の安房に入港予定であり、私達は一番近い一湊港に入るのが精一杯だった。ところが、予定が変わったらしい。
「うちも一湊に入ることにしたよ。」と無線で連絡を受けた。
その後、立て続けに鰹が3匹も釣れたと連絡があった。

一湊港

フォクシーレディにて

『フォクシーレディ』
一湊港の夜は、静かな岸壁に停泊し、夕食には森下さん手作りの夕食と、『フォクシーレディ』に家族で乗船している馬場さんの、釣り上げた新鮮な美味しい鰹の刺身をたらふくご馳走になった。

普段、移動間隔の短い航海の時は、私達はお酒を飲まないようにしている。
港にいても、素直に酒に酔えるほど、気持ちに余裕が無い。というのが本音だろう。ところが、今回は百戦錬磨の旅の道連れがいると思うと、心強く、連夜の酒盛りでは素直に酔えたのが、なんとも可笑しい。

屋久島の一湊港は5年前に『ハーモニー』で訪れたことがある。
5月の中頃だった。港で知りあった漁師さんの船に乗り込み、元力士の特製ちゃんこ鍋をご馳走になった。地元の漁師言葉の訛りが強く、話の半分も聞き取れず、「ワシら、何しゃべっとるかわからんだろ?」と言われ、苦笑したことを覚えている。
ここにもう一度来ることができた。
あの時の漁師さん達はどうしているだろうか。
数年前と比べると漁船の数は減っており、港内は閑散としているのだけれど・・・。
4月の屋久島の森では、早々と蝉が鳴いていた。





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