「アビームでスカッとはしりたいねぇ・・」と話しながらボンボノンをでたのだが、
ミンダナオ島の最北端、トゥバホーンを出て3日間、うんざりするような、期待はずれの東風。
方位80から90度の風に加え、東から2ノットの潮に押され、対地スピードは3ノット程度。これからパラオまで500マイル、この上りがずっと続くのかと思うと、泣きたくなるような悪条件を機搬送でのぼり続ける毎日。
ログメーターは1日140マイル走るが、実際目的地までの距離は90から100マイルだった。
通常、夜間は急な変化に備えて、メインセールを2ポンリーフさせ、インナーセイルで走るのだが、こんなペースではお話にならない。
太陽が沈むと風は時に、50,60度になる。メインセールを1ポイントリーフし、インナーセイルで、走れる風を最大限に使い、ヒールさせながら走り続け、パラオの島影の影響を受ける200マイル手前でやっと東の流れは1ノット程度になってきた。

コロールの港まで、浅瀬が多く、私たちの帆走技術では入れない。
パラオの最南端の島に緊急入港し、燃料を買ってコロール島まで行こうと覚悟を決めていたが、終盤、1日180マイル走れたときには、それまでの疲れも吹っ飛ぶように感じた。

パラオは、島全体がラグーンになっており、有名なダイバー天国。
チェックインは事前に税関に入国予約をすると、50USドルのウオーターTAXと、50ドルのクルージングパーミットを発行してもらい、1ヶ月間滞在できる。
事前連絡しないと、倍額を要求されるらしい。
パラオにヨットで行くときは、「サムズダイビングショップ」に併設しているRoyal Belau YachtClub のマネージャー、ダーモットさんにメールを送り、クルーリストを書いて、入港予約を入れてもらう。
税関の手続きが終わると、港の裏にあるヨットクラブにアンカー、またはムアリングで停泊し、ヨットクラブのボードに名前を書く。
燃料はクラブで買えるし、水は無料でくれる。クラブのバーで飲むビールは最高です。

ウサギとカメのような(ベネトウ44 80馬力ターボ)『風来末』と『ハーモニー』のその後について・・・
ボンボノンからオーバーナイトで100マイル先、ボホール島のビエノビスタが最初の待ち合わせの場所だった。
先に到着した『風来末』は、アンカーを入れ翌日まで眠りこけてしまったらしい。
私たちは、「ボホール周辺の風が良いので、停泊しないで走り続ける。」と彼らに伝えた。
その日の夕方、次の停泊予定場所の到着が真夜中になるので、場所の変更を伝えようとしたが、なぜか交信不能、そして7日後、タイミング良く、数時間遅れで彼らもコロールに到着した。
どこまでも透明度の高い海と、ラグーン。ゆっくりと食事をして、安心して眠りにつける喜びを堪能した。

翌日、こちらに在住しチャーターヨットをされている門多さんの訪問を受けた。
45ftのカタマランを日本から回航し、こちらにご夫婦で住んでいる。
奥様もダイビングのインストラクターで、パラオのことはとても詳しい。
パラオの海を満喫したい方は、ぜひ門多さんのチャーターを体験してみて下さい。
日本語のガイド付きで、大人が満足できるパラオの遊びが体験できると思います。

 
台風の心配もないパラオの穏やかな海だが、いつまでも遊んでいられない。
当初は、パラオから1800マイル先のパプアニューギニア領である、『ルイジエード』まで走り続け、オーストラリアのケアンズに渡る時機を見るというプランだった。
1800マイルは長いが、パプアニューギニアは情勢が悪く、寄航したヨットもいくつかのトラブルに見舞われている。ほとんどは盗難だが、年々悪くなっているといのは共通した意見である。また、マラリアの心配もあり危険なところは避けるようにしたい。
ルイジエードは国境で、治安は良いほうだ。オーストラリアに向かうヨットのお決まりコースなので問題ないだろう。ところが、やはり遅すぎた。この風向きではもう行けない。
[プランB]のこれから時間をかけて、ヤップ、ポナペイなどミクロネシアの島々を周るのも魅力がある。台風のリスクはあるけれど・・

しかし、娘は今月4月、15歳になった。
娘の希望は「7月からオーストラリアで高校に行きたい。」という
独立心の出てきた子供の希望には沿わないといけない。
急遽、[プランC]に変更し、パラオからインドネシアを経由して、オーストラリアのダーウィンに入港することにした。

ダーウィンまでは1500マイル。
家族で航海するのはこの行程が最後になるのかもしれない。
高校に通いだすと、4年間は動けないだろうし、娘は独自の世界に飛び出していくだろう。

さて、『風来末』はこれまたあっさり[プランC]への変更に賛同した。
「いいんですかぁ・・?いいとこいっぱい飛び越えていくんですよ・・」と言うと
「台風の季節、危険な冒険をしてまではいかない。」とおっしゃる。

ということで、来週、パラオからインドネシアを経由してダーウィンに向かいます。
珍道中のご報告は以後メールで・・・

.
.